世界で3本だけのコニャック「コニャック・ゴーティエ1762」

一本数百万円という値段が付けられることも珍しくないお酒の世界。中でも、長い時間をかけて熟成する高級酒は非常に高価なものも珍しくありません。また、時間が経過すれば経過するほど、数も少なくなり、より貴重になっていくもの。今回紹介する「コニャック・ゴーティエ1762」は、約260前に作られた世界でたった3本だけのコニャックです。

コニャックとは?

「コニャック・ゴーティエ1762」をご紹介する前に、まずはコニャックについての基本的な知識を解説しておきましょう。

コニャックとは、フランス・コニャック地方で作られたブランデーのこと。原料となるのはブドウで、ブドウを発酵させてから蒸留、さらに再蒸留することでアルコール度数を高めていきます。

その後、できあがったお酒をオークの樽に熟成を行うことで、色と香りを持ったコニャックが誕生します。その熟成に必要な時間は最低三年。

コニャック地方には約4500のブドウ農家があると言われていますが、専門の蒸留設備を持っているのは約120件だけと言われ、出来上がるコニャックも非常に貴重なものとなります。

なお、高級酒として知られる「ヘネシー」や「レミー・マルタン」、「クルボアジエ」などもすべてコニャックのブランドです。

「コニャック・ゴーティエ1762」とは

それでは、世界にたった3本しかないという「コニャック・ゴーティエ1762」はどのようなお酒なのでしょうか。

ゴーティエは、フランスでブドウ園を営んでいたゴーティエ家が創設したコニャックメーカーです。公式にブランドが誕生したのは1755年ですが、1700年にはすでにコニャック生産を開始していたという、非常に歴史あるメーカーのひとつとして知られています。

その後、1990年代にはフランスの飲料メーカーであるマリー・ブリザール・インターナショナルの傘下に入り、2006年にはベルヴェデーレグループに加入、現在では約90の国や地域で商品を販売しています。

ゴーティエが製造するコニャックの特徴は、まろやかな味わい。コニャックは長期熟成を行う間に水分が蒸発することがあり、蒸発量が多いと、アルコール度数が高く、刺激が強くなってしまいますが、ゴーティエの熟成庫の近くには二つの大きな川が流れていることから湿度が高く、蒸発量も最小限。そのため、まろやかで独特の味わいが生まれます。。

また、ブランデーを熟成させるオークの木の管理も行き届いていて、通常よりもゆっくりと熟成させることが、深い香りと色をもたらしています。

そんなゴーティエはユニークなボトルデザインでも知られています。たとえば、海に浮かぶブイのような赤い網のかかった球体のボトル。お酒にくわしくない人でも、一度は見たことがあるかもしれませんが、これはゴーティエの「フィッシャーボール」と呼ばれるもの。

そのほかにも、球体のボトルをランタンに埋め込んだ「ランタンコニャック」なども人気があります。

そんなゴーティエが生産した「コニャック・ゴーティエ1762」は、名前の通り、1762年にゴーティエによって作られたコニャックです。1762年といえば、プロイセン王国とロシア帝国の間で発生した七年戦争が終結した年。また日本では徳川家治が十代将軍を務めていた時代です。それだけでも、「コニャック・ゴーティエ1762」がどれほど古いものなのかご理解いただけるのではないでしょうか。

世界で3本だけのコニャック

世界で3本だけの「コニャック・ゴーティエ1762」がロンドンの大手オークション・サザビーズに出品されたのは2021年のこと。当時史上最高額となる11万8580ポンド(約1600万円)で落札されました。

この「コニャック・ゴーティエ1762」はある一家が19世紀の末から保管していたもので、ラベルも製造当時のままで、その面でも高い価値が認められました。。

この「コニャック・ゴーティエ1762」は「グランフレール」と呼ばれているもの。「グランフレール」は「兄」を意味するフランス語で、残りの2本は「妹」「弟」と呼ばれています。

「妹」は、ゴーティエの博物館に保存され、「弟」はニューヨークのオークションで落札されています。なお「弟」のボトルはすでに開封されているとのことです。

サザビーズの説明によれば、落札された「兄」は、出品者の曽祖父母がかつて養子に迎えたアルフォンスという人物から送られたもの。アルフォンスは孤児として育ちましたが、養子に迎えられたあと、フランス・コニャック地方に働きに行き、帰宅したときには、たくさんのコニャックを持参していました。

その中に、貴重なゴーティエのコニャックが含まれていたといいます。なお、その後アルフォンスは第一次世界大戦に出征、戦死したと考えられています。

今回「兄」のボトルを落札したのはアジア人の収集家で、落札価格には蒸留所での「特注体験」が含まれているとのこと。またサザビーズの蒸留酒専門家によれば、この「コニャック・ゴーティエ1762」はまだ飲むことができるといいます。

約250年前に誕生したコニャック。どんな味がするのか、ぜひ試してみたいものですね。

 

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