福井県鯖江市。
物作りの町で知られるこの町に「ろくろ舎」があります。
工房の中では「丸物木地師」の酒井さんが作業をしています。
工房には、制品作りに使用される機械がある他、制作過程の制品が積み上げられていました。
いかに自らの作り出す品々に、日々向き合っているのかを感じ取ることができます。
今回ご紹介したいのは、酒井さんが作り出すBASEという制品シリーズと、T I M B E R P O Tという鉢植えです。
また直接取材を行い、酒井さんの作品作りの想いなどをお聞きしました。
そちらも併せてご紹介します。
ろくろ舎・酒井さんの作り出す品々
ろくろ舎は2014年に丸物木地師の酒井さんによって設立されました。
丸物木地師とは漆器生産時の工程の内、初期段階の作業を担う職人のことで、多種多様な漆器の木地を作ります。
そんな丸物木地師の酒井さんが作り出す作品は、高く評価されています。
2015年に「インテリアライフスタイル東京」という見本市に出展。
そこで「ヤングデザインアワード」を受賞し、2016年にはドイツで開催された国際見本市にも招待されました。
国内外で評価されている酒井さんは、一体どのような作品を作り出しているのでしょうか。
BASE
Photo by Rui Izuchi
BASEはろくろ舎が制作したシリーズ製品の一つです。
木地、下地などの素材が持つ美しさが存分に表現された逸品。
BASEシリーズにはお椀、酒器、お盆があります。
それぞれ土台が高く設計されていて、素材の美しさだけでなく、力強さも表現されています。
BASEシリーズに料理やお酒をよそうことで、普段とは違った料理の見せ方が、できるのではないでしょうか。
T I M B E R P O T
Photo by Rui Izuchi
T I M B E R P O Tは間伐材を丸太の状態から、削り出して仕上げた鉢植えです。
間伐材(かんばつざい)とは、山を手入れする作業の過程でできる木材のことです。
森林の木々は過密になるにつれて、地表まで日光が届きにくくなり、木々の成長が妨げられてしまいます。
それを防ぐため、木々の一部を伐採し、森林の健全さを維持。
この作業を間伐といいます。
間伐材はその作業の過程でできる木材です。
間伐材から制作されたT I M B E R P O Tは経年変化によって、黒ずみなどが発生しますが、そこに味わいがあり、制品そのものから、趣深さが感じられます。
工場で大量生産された無機質な製品からは感じられない深み。
そんな魅力がT I M B E R P O Tには宿っています。
ろくろ舎・酒井さんの作品作りの想い
「まず工芸品という言葉はあまり好きではありません。作っているのはあくまで日用品です。町工場でねじを作っているのと同じですよ。ですが、丁寧に作ることは考えています。」
自身の品々について、このように話す酒井さん。
丁寧に作ること。
それが制作をするうえで、酒井さんが心がけていることでした。
一方で、お椀などは工場で大量生産され、十分な数が流通されています。
「おそらく、世の中に余っているお椀で十分事足りると思っています。」
酒井さんもそのような現状を理解していました。
ただ、その状況を踏まえたうえで酒井さんは、お客様と直接やり取りをすることに力を注いでいます。
「その状況下で自分の精神衛生上オーダーで直接お客様と対峙して少量のお椀を作るという方向をメインにしています。」
私たちが普段作る日用品のほとんどは、工場で大量に生産された物です。
そこに生産者の顔は見えませんし、生産者も私たちの顔が見えないでしょう。
しかし、直接お客様と対峙し、制作することで、お客様は作り手を見ることができますし、造り手もお客様の顔を見ることができます。
そうすることで、人の手で一つ一つ丁寧に作り上げられた物の良さ、完成までの苦労、素材の美しさなどが、理解できるようになるのではないでしょうか。
酒井さんの工房に残る作業跡を、カメラ越しに見つめながら、ふとそう思いました。
まとめ
今回は、素材の美しさだけでなく、力強さも表現されているBASEシリーズと経年変化が趣深さを感じさせるT I M B E R P O Tをご紹介しました。
そして、酒井さんの制作者としての想いと、現状を踏まえたうえでの方向性をお聞かせいただきました。
この記事が、酒井さんの品々に触れるきっかけになれれば幸いです。
取材を受けていただいた酒井さん、そして最後までお読みいただいた読者の皆さま、誠にありがとうございました。